© 2012 Gohki Endo All rights reserved.

現代の美術、芸術は…


 現代の美術、芸術は自然の真理を探究するという目的と、その探究の基礎である本格のデッサンをすっかり喪失している。そうして低迷し退歩している。
 現代は自然科学と人文科学、科学と芸術と宗教がバラバラである。


 現代は科学と芸術と宗教が調和していない。
 科学技術の物質文明に翻弄されて、精神文化の混迷と頽廃の時代である。
 科学と芸術と宗教が調和した文化の基礎からの復興に向って、自然科学と人文科学の全体的研究が必要である。
 自然と人間との調和と、自然の生命との共生が、科学と芸術と宗教の共通の目的であり理想である。


 


 自然科学——数学、天文学、物理学、化学、地学、生物学、動植物学等。広義では農学、医学、及び工学等。——は人間の外部の客観的自然の探究である。
 人文科学——文学[宗教、哲学、歴史、小説、詩等全ての言語表現]。音楽[声楽、器楽、演劇等全ての音声表現]。美術[建築、彫刻、絵画、工芸等全ての造形表現]——は人間の外部の客観的自然と、人間の内部(精神・心)の主観的自然の一体性の探究である。
 共に自然の存在と現象、物質と生命、生命と精神、空間と時間等の探究である。

 自然科学の研究には基礎物理学、基礎化学、基礎生物学等の理論と実験の基礎が必要であるように、人文科学の造形芸術には基礎造形の理論と実践の基礎が必要である。その基礎をデッサンと言う。
 西洋においては、ルネッサンスのレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、デューラーから、レンブラントをへてゴッホ、ピカソ、ジャコメッティにいたるまで。東洋においては宋元時代の王維、董源、李成から范寛、郭熙、許導寧。室町時代の雪舟、雪村から友松、永徳、等伯、光琳をへて若冲、広重、北斎、鉄斎にいたるまで、デッサンの探究が根本になっている。

 自然科学からつくり出す「技術」は時代と共に進歩するが、人文科学の「芸術」は進歩せず変化するだけである。時代によって頂上があり、谷がある。

 西洋においては、古代ギリシャ彫刻、イタリアと北方ルネッサンス絵画、彫刻、十八、九世紀のドイツ音楽、十八、十九世紀フランス絵画、彫刻。東洋においては、インドガンダーラ、マトウラの彫刻。中国北魏から唐の彫刻、奈良から鎌倉の彫刻、中国宋元から日本室町の絵画、… 等は頂点である。

 現代の美術、芸術は自然の真理を探究するという目的と、その探究の基礎である本格のデッサンをすっかり喪失している。そうして低迷し退歩していて谷である。

 人類は古代から自然科学と人文科学両方の分野で、自然宇宙の真理を探究し、偉大な業績を後世に伝えて来た。
 古代エジプトのピラミッドやスフィンクスを造った人達(宗教者、芸術家、建築家、技術者等)。古代ギリシャのピタゴラス、エウクレイデス、アルキメデス等の科学者達。アテネのパルテノン神殿を建てた人達(宗教者、芸術家、建築家、技術者等)。古典期のフィディアスやプラクシテレス等の彫刻家達。中世期のシャルトル大聖堂を造った人達(宗教者、芸術家、建築家、技術者等)。ルネッサンス期のイタリアの画家、彫刻家、建築家、科学者であったレオナルドとミケランジェロ等。近世のコペルニクスからガリレオ・ガリレイをへて、近・現代のニュートンからアインシュタインに至る自然科学者達。詩人であり、動物や植物や色彩の自然科学者であったゲーテ。自然の植物と動物を造形し、聖家族教会(サグラダ・ファミリア)を建てた建築家のガウディと聖職者達。
 古代から近世をへて近代に至るまで、自然科学と人文科学の両方が調和した文明、文化を創造する目的と理想をもって、自然科学者と人文科学者(宗教、哲学、文学、美術、音楽等の専門家)は、自然宇宙の真理を探究して来た。

 現代は自然科学と人文科学、科学と芸術と宗教がバラバラである。
 現代は科学と芸術と宗教が調和していない。科学技術の物質偏重の文明のために、精神文化の混迷と頽廃の時代である。
 科学と芸術と宗教が調和した文化の基礎からの創造の復興に向って、自然科学と人文科学の全体的研究が必要である。
 自然と人間との調和と、自然の生命との共生が、科学と芸術と宗教の共通の目的であり理想である。

 
 
 
 
 
 

Leave A Reply

You must be logged in to post a comment.