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不断にデッサン。精神集中。一筆入魂。   デッサンは自分の足が大地に然と立つことを確認する行為。

 世界中が本当のデッサン=基礎・根本をやらなくなったが、私は不断にデッサンをする。
 愚直に一筆に力をこめて、無器用な誠実さをもって、自分に出来る限りのことをする。
 佛弟子聖シュリハンダカのようになれたら幸せである。

 私は今、雪舟とセザンヌとゴッホの絵を複製で見ている。
 彼等の絵は真剣だ。真面目だ。真実以外の何ものもない。一筆入魂。
デッサン=基礎・根本そのものだ。
 雪舟の純潔廉直。セザンヌの純真至誠。ゴッホの純情献身。彼等の絵に表れている聖なる人格を私は尊敬する。
世間や他人を気にして、展覧会絵や売り絵を描く者達が本物である道理がない。
 雪舟は禅僧であり、職業画家ではない。しかし絵は余技ではない。禅の思想の自己表現をするには、絵画しかないというところまで行った人である。
 セザンヌとゴッホは共にキリスト者であり、心の貧しき者として求道し、他人に報酬を求めず、無名の絵画の仕事をすること以外は、何もできないところまで行った人達である。

 デッサンは形の厳しい見方である。デッサンをする人間の精神は硬質である。
 デッサンは絵画の基礎・根本であると同時に、人間の基礎・根本である。
 造形の骨子であると共に、人間の気骨である。
 単なる技術や熟練ではなく、真摯な精神態度であり、曲がったことは断じて許さぬ真直な姿勢である。 
 デッサンは小手先ではなく全身で描き、自分の足が大地に然(しか)と立つことを確認する行為である。
 私は対象物のうわっつらを見ず、内部に入り込む。強い筆圧で紙は食い込まれ、時々破れる。虚飾をはぎとり、原点からの本質と根源の探究である。

1998(2011改稿)

 
 

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