© 2012 Gohki Endo All rights reserved.

傾倒と讃嘆。伝統と創造。

 「偉大な人間に傾倒した者ばかりが、文化の最初の清祓を受けるのだ。」

                     ニーチェ

 「頭を下げよフイディアスの前に、そしてミケランジェロの前に。讃嘆せよ、前者の神々しい静けさを、後者の激越なる苦悩を。讃嘆は高貴な人間が酔うにふさわしい芳醇の美酒である。」

                     ロダン

 現代は、大自然と、太古から近代までに人類が創造してきた、偉大な芸術作品とその作者である人間への、尊敬と愛を喪失した時代です。
 大自然と、巨匠、天才から啓示を受け、学び、自己の人間形成、人格形成(思想、哲学、人生観、世界観)に努め励むことを、しなくなった時代です。
 現代は、巨匠、天才に全身的に傾倒せず、それゆえに彼等を継ぐ巨匠、天才が出ない時代です。
 自分が芸術をつくるのではない。歴史上の諸々の芸術の傑作に出会い、傾倒し、研究し、時には対決して、一生涯かけて仕事をして、自分の芸術をつくるのです。このことは、歴史上の偉大な芸術家達に共通する宗教的精神態度です。
 私は、殊更新しいものをつくろうとか、世間に目立つことをしようとか考えたことは全くない。自然と歴史上の巨匠、天才達の作品から学ぶこと。この人間としてあたり前のことをしようと努め励んできた。非凡なことをしたと思ったことは全くない。現代はこのあたり前のことを失っています。
 巨匠、天才とは、真実と愛をもって、自然と人間を深く探求した人達です。
 日々早朝から日没まで、制作に励む芸術家にとって、自然は新鮮な尽きることのない生命であり、力であり、神である。
 制作することが信仰であり、道徳であります。
 自然、実在がなければ、太古からの人間の健全な芸術創造の行為は存在しないのですが、現代は自然・実在・生きた神との直接の交流という根本と源泉を喪失した、本来の芸術文化の不毛の時代です。
 こんな時代に、敬虔な心で、再び自然と、伝統、古典、巨匠から学び、生命のある芸術文化を復活させましょう。

 
 
 
 
 
  

Leave A Reply

You must be logged in to post a comment.